Q1:審美歯科と矯正歯科の違いはなんですか?
A1:一般的に『審美歯科』とは、歯を動かすことなく、歯を削ってセラミックス製などのかぶせ物をし、形や色を変えて整える歯科治療のことをさします。一方、『矯正歯科』は自分の歯を生かしたまま硬い骨の中を動かして位置を変え、整える治療のことをさします。
矯正装置を装着しなければならないことや治療期間が長いというデメリットもありまが、健康な歯を極力生かし、あごや歯ぐきのバランスを正していくことができます。
Q2:どうして矯正治療には長い年月がかかるのですか?
A2:理由は、歯が動くメカニズムと関係します。歯は、歯ぐきの中に「歯根膜(しこんまく)」という薄い膜をクッションにして、「歯槽骨(しそうこつ)」というあごの骨に植わっています。歯にごく弱い力を加え続けると、圧迫された歯根膜側のまわりの骨がだんだん吸収されていき、圧迫されたのと反対側の骨は、歯が移動した分だけ隙間が開き、そこに新しい骨がつくられ歯が動きます。その性質を利用して、口の中に矯正装置を入れ弱い力を歯にかけて人工的に動かし、歯並びを整えていくのが矯正治療のしくみです。
個人差はあるものの、歯は硬い骨に生えているので1ヶ月に1ミリほどの割合でしか動かすことができません。したがって、歯の移動量が多い場合は年単位での治療期間がかかってしまうのが一般的です。
Q3:治療をするにはぜったい歯を抜かなければいけないのですか?
A3:最初から無条件で歯を抜く・抜かないを決めるのではなく、治療後の予測ゴールをどのように設定するかで決まってきます。つまり、治療する前に十分に精密検査をし、患者さんの状態を把握して治療方針を立て、そのうえで患者さんの上下の歯並びの不調和の改善や、歯とあごの大きさの不調和を改善するために歯を抜くことが必要かどうかを判断します。
Q4:歯並びが気になる前歯だけに装置をつけて治療することはできますか?
A4:矯正治療で固定式装置(ブラケットやワイヤーなどの取り外しのできない装置)を装着して歯を動かしていくときは、動かしたい歯だけに装置をつけても、思った方向に動いてくれません。矯正歯科ではお口全体の歯並びや咬み合わせを、患者さんにとって最良な状態に治療するよう心がけているので、気になっているところだけではなく、ある程度、多くの歯に装置をつけることになります。
Q5:矯正装置について教えてください。
A5:おとなの矯正治療で使用される装置は、歯の表面にブラケットという器具を接着材で貼り付け、そこにワイヤーを通す「マルチブラケット装置」と呼ばれるものが第一選択となります。ワイヤーは、ステンレスや形状記憶合金、ニッケルチタンといった弾性のある素材でできているほか、細くてやわらかいものから硬いものまで種類はいろいろあります。このワイヤーから生み出される弱い力を利用して歯並びを整えていきます。 ブラケットはワイヤーからの力を歯に伝える装置。3次元的に効率よく歯を動かせるよう精密な構造になっています。
ブラケットの素材は、丈夫な金属(メタル)製のほかに、透明で目立ちにくいセラミックス製やプラスチック製のものがあります。 きれいに並んだ歯並びを手に入れた後は「リテーナー」という保定装置を使っていただきます。
残念ながら、矯正治療で手に入れたきれいな歯並びは、ワイヤーやブラケットを取った後そのままにしておくと、もとの歯並びの状態に戻りやすいという性質があります。
そこで、適切な位置に移動した歯を、その状態でキープしておく保定装置の使用が必要となります。最近では、中高生や大学生のほか、社会人はもちろん、年齢を重ねられた方で矯正治療を始められる方も増えています。「歯並びを治す」ことは、見た目を美しく、自分自身の自信を取り戻すことができたり、噛む機能を回復し、虫歯や歯周病に対する予防にも有効で、お口の中の環境向上を始め、健康の第一歩となるのです。
矯正治療は、一般のむし歯の治療などとは異なり治療期間が長期にわたります。矯正歯科医と患者さんの協力があってこそ、よりすばらしい結果が生まれます。吉祥寺・ひおき矯正歯科は患者さん一人ひとりの大事なパートナーとなれるよう、努めてまいります。
Q6:医療控除について教えてください。
A6:矯正治療は医療費控除の対象となります。領収書はなくさず大切に保管なさってください。
一般的に矯正治療の費用には健康保険が適応されません(注1)
医療控除をぜひご利用なさってください。
これは、生計を共にするご家族が1年間(1月1日から12月31日)に支払った医療費が
10万円を超えた場合に、下記の計算式で出した額を確定申告すると、
その年の所得から差し引いてもらえる還付制度のことです。
1年間に支払った医療費の総額-医療費を補填する保険などの総額=A
10万円もしくは総所得金額の5%=B(額の低いほうを対象とする)
A-B=医療費控除額(最高200万円)
申告する際には治療費を支払ったときの領収書が必要です。
忘れずに保管なさってください。この制度は過去5年にさかのぼって申告できます。
(注1) 厚生労働大臣が定める疾患による咬合異常の矯正治療と、顎変形症(あごの骨の手術を必要とする症例)の手術前後の矯正治療は健康保険が適応されます。
Q7:矯正治療を行ううえでのリスクや副作用はなんですか?
A7:医療行為には、メリットとともにリスクや副作用もあります。問題点を知っていただいた上で治療を受けることが、よい結果を生み出す近道になると考えます。
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります 。 数日間 1、2週間で慣れることが多いです 。
- 歯の動き方には個人差 があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性が あります。
- 装置の使用状況 、顎間ゴムの使用状況 、定期的な通院等、矯正治療には患者 さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受け たりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収 して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着 していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性 があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります 。